随想舎 

学童疎開空腹物語

国民学校二年生の九カ月

井上 隆夫

 東京大空襲、そして集団学同疎開。食事の量は確実に減っていった。ぼくたちはいつも腹を空かしていた。もう我慢ができない。しまいには、セミまで食べた--戦争というものが、一握りの支配者の誤った思惑から起こり、国民を思いもよらない戦禍に巻き込み、予想だにしない苦しみの中に追いやり、平和に生きる権利を奪い取る非常なものであることを、少しでも次世代の人たちに知ってほしいと思い、この書をしたためた次第である(本文より)。

四六判/244頁/定価1540円(本体1400円+税)
ISBN 4-88748-141-1

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著者プロフィール

井上 隆夫  いのうえ たかお


昭和12年10月 東京都下谷区入谷に生まれる。
昭和31年 3月 東京都立武蔵高校卒業。
昭和36年 3月 法政大学経済学部商業学科卒業。
昭和49年 3月 神奈川歯科大学歯学部卒業。
昭和52年 9月 栃木県小山市内に歯科医院を開業、現在に至る。

目 次

 第一章 戦時下の生活

  通せんぼ  14
  通気孔  22
  傷病兵慰問  30
  紙芝居屋さん  35
  映画館  41
  国民学校入学面接  44
  卒園式  47
  カーチスの恐怖  49
  金魚売り  52
  まとめ役  57
  兄姉は疎開地へ  60

 第二章 東京大空襲

  B29来襲  64
  上野の山を目指して  66
  焼夷弾の威力  70
  避難民の群の中で  76
  祖母の胸に抱かれて  79
  焼け残っていたわが家  85
  祖母の実家へ  91

 第三章 学童疎開

  旅立ち  104
  雪国へ  108
  お握り  115
  雪の山道  117
  兄弟再開  127
  テニアンさん  133
  疎開生活  138
  ウスノロ  143
  失踪事件  146
  母来たる  149
  事件解決  153
  湯治客  157
  戦 況  160
  害虫撲滅作戦  161
  山菜採り  163
  川魚の干物  167
  里子体験  173
  綾さん  178
  土産物をめぐって  187
  中身のないスイカ  194
  アブラゼミの味  200
  訃 報  207

 第四章 終戦と帰京

  玉音放送  210
  栄養失調  216
  友の死  218
  迎えに来た父  224
  食べ物の山を前にして  229
  帰 京  234