随想舎 

孝子桜

小板橋武[絵・文]

 そこには満開の桜の花が咲いていた。桜の花が見たいという病んだ父親の願いを叶えさせたくて、孝行息子の孝助は冬にもかかわらず、桜の木の下で毎日祈りつづけた。自分の死期を悟った父親は、花は咲いていなくても桜の木をひと目だけでも見たいと、孝助に頼んだ。次の日、父親を背負って孝助は桜の木のところに歩いていった。すると、そこには……。
 「孝子桜」は宇都宮市立城山西小学校の校庭にある枝垂れ桜で、宇都宮市の天然記念物に指定されています。推定樹齢は400年と言われており、栃木県内はもとより全国的にみても古木の部類に入ります。毎年春になると、まるで老木に鞭打つかのように見事な花を咲かせるその姿が、こうした民話を生み出したのです。まさに地域のシンボルといえるでしょう。

B5横判/上製/24頁/定価1047円(本体952円+税)
ISBN 978-4-88748-271-5
2012年12月19日 第1刷発行

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著者プロフィール

小板橋武[絵・文]   こいたばし たけし

1936年 神奈川県に生まれる。
1997年 小学校教員退職。
2006年 およそ10年をかけて全国の文化財を訪ね歩き、『これだけは見ておきたい各県一か所の旅』を出版。
2007年 随想舎から『宇都宮大空襲 一少女の記録』を出版。
2009年 随想舎から『戦時下の女学生たち』を出版。
2010年 随想舎から『少年とハト』を出版。
2011年 随想舎から『安善寺物語』を出版。
現 在 下野民話の会会員。宇都宮市内の小学校・老人ホームなどで民話語り部として活躍中。