随想舎 

ひぐらしの歌ごえ

昭和前期・矢板地方の歳時記物語

鈴木 幸市

 わら屋根の下には、いろりを囲む家族のくらしがあった。
 昭和前期・栃木県矢板地方の農家のくらしを、農作業や通過儀礼、年中行事をとおして回顧する。
 ここには、農村の原風景が広がっている。
 本書については、昭和前期の農村の歳時記に焦点をあて、それにかかわる物語を加味し、魅力的な文体を書いてみようと考え、聞き取り調査やメモ取りを続けてきましたが、原稿作成までに十有余年が過ぎてしまいました。
 そこで、人生米寿を迎えた私にとって、薄れがちな記憶をたどりながらも、昭和前期の世相を書きとめ、多少なりとも読者の皆さんの心の糧となればさいわいと思い、歳時記物語発行を考えました。(本文より)

A5判/上製/160頁/定価1018円(本体926円+税)
ISBN 978-4-88748-313-2
2015年12月1日 第1刷発行

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著者プロフィール

鈴木 幸市  (すずき こういち)

1927年、栃木県塩谷郡北高根沢村(現高根沢町)生まれ。
1945年9月3日、太平洋戦争さなか軍務(志願)に服し、陸軍第六航空軍(九州に展開)から復員、家業(農業)に従事。
1953年、学校教員免許状取得のため上京し、明治大学短期大学部社会科卒業。
同年4月、栃木県塩谷郡泉村(現矢板市)立泉中学校教員となる。
1988年3月、中学校教員23年、小学校教員12年、計35年の教職を経て退職。
退職後、
矢板市陸上競技協会会長
矢板市古文書調査員
矢板市文化財保護審議会委員
栃木県文化財保護審議員
矢板市文化財愛護協会会長
矢板市川崎城跡公園再生市民会議会長などを歴任。

主な著書
『矢板市古文書史料所在目録』
『矢板の石仏と塔碑』(共著)
『矢板の古道』(共著)

目 次

第一章 農村のくらし

 第一節 母屋は家族のきずな館

一、わら屋根への思い
二、台所のささやき
(1)会話のはずむいろり端
(2)あらぬかかまどはご飯炊き上手
(3)へっついのはたらき
(4)流し台のささやき
(5)広い板場は食事としつけの場所
 ①子どもたちの弁当
 ②から弁当物語
(6)土間物語
 ①つらかったタバコのし
 ②夜なべは教える
 ③大きな笑い声
(7)まやがら
 ①馬にも召集令状
 ②馬は神様
 ③まやがら
(8)土間でのいたずら
三、納戸のおふだ
四、座敷こたつの思い出
(1)ご馳走は横目で見るだけ
(2)冬の座敷ごたつは子どもらの天国

 第二節 農家の庭は広かった

一、庭の南は木の葉の山
木の葉さらい物語
二、薪やま通い
薪棚のくじ引き
三、醤油しぼり
(1)子どもらにも楽しい醤油しぼり
(2)醤油のもと、もろみ造り
四、葉タバコの種まき
五、にわとりの放し飼い
にわとりの宿は「とぐら」
六、庭ぜんたいがハッテ
(1)葉タバコ収穫作業
(2)葉タバコ天日干し
七、農閑期の庭は子どもらの遊び場

 第三節 人生の通過儀礼

一、成人前の通過儀礼
(1)お 産
(2)お七夜・おびやあけ・地蔵参り
(3)食い初め
(4)初節句
(5)初誕生日
(6)七五三祝い
(7)十三参り
二、大人の通過儀礼
(1)元服のなごり
(2)徴兵物語
 ①兵隊検査
 ②甲種合格
 ③たちぶるまい
 ④兄を送る日
 ⑤入隊・面会
 ⑥第五十九連隊戦地へ
 ⑦終戦・復員
(3)婚姻儀礼
 ①見合い
 ②樽入れ
 ③結 納
 ④広がるうわさ
 ⑤日取り決め
 ⑥嫁迎え
 ⑦花嫁行列
 ⑧花嫁到着
 ⑨結納返し
 ⑩結婚の儀式
 ⑪披露宴
 ⑫近所めぐりと婚姻届け
 ⑬新婚旅行
(4)厄年・隠居・年祝い
 ①厄 年
 ②隠 居
 ③年祝い
還暦の祝い/古稀の祝い/
喜寿の祝い/傘寿の祝い/
米寿の祝い/その後の年祝い
(5)葬送の儀礼

第二章 農村の年中行事

 第一節 冬から春へ

一、一月「睦月」 神事の多い月
(1)楽しかった旧暦正月三が日
 ①旧暦元旦
 ②正月三が日物語
三が日の刻参り/素足参り
 ③正月二日 福箒
(2)一月四日 とろろ飯
(3)一月六日 山入り
(4)一月七日 七草粥
(5)一月十一日 鍬入り
(6)一月十四日 どんどん焼き
とり小屋物語
(7)一月十五日 小正月
(8)一月十六日 やぶ入り
(9)一月二十日、二十日正月、
 えびす講
鮒取り物語
(10)一月二十八日 勝善さま
二、二月「如月」春への喜び、
 休息・農作業準備の月
(1)二月節分 立春
旧暦十二月晦日頃
豆まき物語
(2)旧二月八日 針供養
 縫いもの物語
(3)旧二月十日(春)十月十日(秋)
 地鎮祭
(4)二月十日ごろ 初午
(5)旧二月十日、金毘羅さま
(6)二月下旬、学芸会
(7)二月下旬 野火焼き
(8)二月下旬 道普請
三、三月「弥生」木の芽・
 人心共にふくらむ月
(1)三月三日 旧暦三月三日
 ひな祭り
 ①ひな祭りのお供え膳
 ②飾る雛人形
(2)三月十七日~二十三日ごろ
 春の彼岸
春のお彼岸物語
(3)三月下旬 川普請
(4)麦のこと日
麦のこと日物語
(5)三月下旬から四月上旬 田うない
田うない物語

 第二節 春から夏へ

一、四月「卯月」 田に苗育てる月
(1)四月上旬 水あげ 堰祭り
水あげ物語
(2)四月中旬 苗しろ種まき
二、五月「皐月」 しろかきの月
(1)四月中旬~五月下旬、しろかき
しろかき物語
三、六月「水無月」田植え・
 田の水を守る月
(1)学校も休業日を設けた田植え時
田植え物語
(2)小作制度から自作農へ

 第三節 夏から秋へ

一、七月「文月」、稲穂の出る月
(1)七月上旬 さなぶり・
 おおさなぶり
さなぶり/おおさなぶり
(2)七月中旬 麦秋「大麦・
 小麦のとり入れ時」
こぼれた小麦物語
(3)七月上旬 田の草取り
(4)七月上旬 天王さま祭り
一の矢の天王祭 旧六月七日
二、八月「葉月」、稲穂の実る月
(1)八月一日 旧七月一日 釜の蓋
釜の蓋まんじゅう物語
(2)八月七日、旧七月七日
七夕まつり 墓なぎ
(3)八月十三日~十六日
 旧七月十三日~十六日 盂蘭盆会
 ①十三日 迎え盆
 ②十四日~十五日 盆中日
お中元 七月十五日
旧暦でも七月十五日(盆の中日)
 ③十六日 送り盆
 ④盆踊り物語
(4)八月二十三日、土屋の北向き地蔵尊供養
三、九月「長月」 夜なべが多くなる月
(1)九月一日 防災の日二百十日「荒れ日まち」
(2)九月上旬 水切り
(3)九月中旬 旧八月十五日 十五夜
ぼうじぼ打ち 十五夜物語
(4)九月二十日~二十六日頃 秋彼岸

 第四節 秋から冬へ

一、十月「神無月」神々出雲へ、稲刈り最中の月
(1)九月中旬~十月下旬 稲刈り
稲刈り物語
(2)十月中旬 旧九月十三日 十三夜
(3)十月上旬~十一月上旬 稲こき
 ①稲こき物語
朝は星、夕べは月の影ふむ農家/
こきあげ/籾干し/わら干し/
かいば切り
(4)十月下旬 旧暦九月十九日 おくにち
二、十一月「霜月」霜の降り始め、稲作の仕上げの月
(1)するすひき
(2)十一月三日 明治節 現在は文化の日
(3)十一月十五日 七五三
(4)十一月十五日 油しめ
(5)十一月二十日 旧十月二十日えびす講
(6)十一月二十三日 勤労感謝の日 梵天祭り
(7)十一月中旬 道普請
(8)十一月中旬 旧十月十日 地鎮祭とうかんや
三、十二月「師走」来年の準備の月
(1)旧十二月一日 かぴたり
(2)旧十二月八日 師走八日
(3)旧暦十二月十三日 すすはらい
すすはらい物語
(4)十二月二十一日頃 旧十一月中旬冬至
(5)十二月下旬 暮市
(6)旧十二月二十四日~二十六日納豆ねせ
(7)旧十二月二十六日~
二十八日年神さま・しめ縄つくり
(8)旧暦十二月二十七日~二十八日門松とり
(9)十二月二十八日~三十日 餅つき
餠つき物語
(10)十二月三十日 門松たて
(11)旧十二月三十日 正月の飾り仕事
(12)十二月三十一日 旧十二月三十日大晦日
 ①大晦日物語
 ②年越しそば